環境ニュース 建築環境の原因となる肥満レベル
今月の NIEHSニュース(p. A616) では、最近初めて開催された肥満と建築環境に関する会議について報告している。科学者、計画立案者、議員が、地域社会の設計と建築環境の他の要素が如何に肥満の原因となっているか、また、肥満を阻止するために科学と政策が共同でどのような措置を講じることが可能かについて協議を行った。
都市部のスプロール現象:アメリカを食べた怪物
この怪物は巨大で、凶悪で、飢えている。都市部のスプロール現象が米国の土地を凄まじい速度で食い尽くしている。そして近い将来この怪物が食い荒らしを止めるといえる徴候は殆どない。Focus (p. A620) では、現在の米国における都会のスプロール現象について調査し、この現代の厄介者を阻止する方策を打ち出している都市がごく僅かで ると報告している。
発展途上国で急激増加している交通事故死
過去数十年間にわたって、開発途上国での交通事故による死者数は増え続けている。世界保健機構(WHO)と世界銀行の最近の報告では、現在の傾向が変わらなければ、2020年までに発展途上国の交通事故による死者数は83%増加すると予想している。それにも拘らず、交通事故死を避けることは不可能に近い。Spheres of Influence (p. A628) では、この悲劇的で不必要な傾向の深刻さとこれと戦うための措置の必要性にゆっくりながらも議員たちの目を覚まし始めたというWHO/世界銀行の報告とその他の最近の調査について記述している。
将来の発泡プラスチックに更なる発泡性
Innovations (p. A632) では、オゾンを枯渇させるクロロフルオロカーボンを使用せず、軽量、柔軟性、緩衝性、絶縁性、高浮遊性という望ましい性質を維持する素材を生成するために、粘土のナノ粒子と超臨界二酸化炭素が発泡プラスチックに適用されている様子を記述している。
研究 すべてのエストロゲンは生来類似している?
大気中に放出された合成エストロゲンは、植物エストロゲンや生理エストロゲンとは何らかの面で違っていると考えられることが多い。Moggsら(p. 1137) は、マウスの子宮で生理エストロゲン17ß-エストロジオール、植物エストロゲンgenistein、合成エストロゲン・ジエチルスチルベストールによって誘発された分子効果の遺伝子発現プロファイリングについて記述している。物質により同じ179個の遺伝子の発現が変わるということを根拠に、彼らは、植物エストロゲンや生理エストロゲンとの比較で、ヒトに特有の危険性を呈する合成エストロゲンに関しては今後も研究が必要で ると結論付けている。
疾病の発生を利用して生態系干渉を導く
ヒトの健康は、多くの場合、環境要素に依存している。Cookら(p. 1143) は、生態系の健康を測定する既存の方法と比較して、捉えどころのない生態系の健康の評価に関して、人間の疾病率が最も有用で実際的な生物指標の一つで るという可能性について論じている。このアプローチの使用によって、適切な生態系を基礎とした治療戦略が、環境モニタリングのみを基礎とした場合に比べて早期に導入できると考えられる。これにより、「生態系の危難」やその結果ヒトに生じる病気という負荷のレベルが低減される。
ボストンの少数民族の鉛レベル
Linら(p. 1147) は、マサチューセッツ州ボストン市内の各地区に住む少数民族の人たちの血液と骨の鉛レベルを測定した。血液、脛骨、膝蓋の鉛レベルの年齢別1変数回帰グラフでは、55歳で曲線に変化が見られ、55歳以上の被験者の曲線が若い世代の被験者よりも急な勾配を示しており、また主に白人の55歳を越える人たちを対象とした研究で見られた曲線よりも著しく急な勾配を示している。この年齢層の鉛の蓄積は、他の研究により高血圧や認知機能不全などのリスクが高まると予測されているため、懸念が生じている。
年齢別の発ガン性の違い
米国環境保護局は、ガンのリスク査定ガイドラインの改定作業の一環として、動物のガンのバイオアッセイ・データを週齢層別に分析した。Hattisら(p. 1152) は、これらのデータの最新分析を、初回の分析に含まれていなかった化学物質の発ガン性の研究結果および電離放射線のバイオアッセイ研究結果とともに報告している。代表的な結果としては、誕生〜離乳期に突然変異誘発性を持つ発ガン性物質に対する発ガン感受性が5〜60倍増加したこと、また、放射線発ガン性では1グレイにつき小規模の増加(その中心は約5倍)が見られたことが挙げられる。
BPAおよびNPへの曝露による行動変化
Negishiら(p. 1159) は、妊娠3日目から出産後20日目の間に毎日ビスフェノールA(BPA、0.1 mg/kg/日)とノニルフェノール(NP、 0.1と10 mg/kg/日)を投与し、胎盤および授乳を通しての周産期曝露が、F344ラットの雄の子供に行動の変化をもたらすか否かを検証した。子供の多様な行動形態を生後8〜22週目の間に間隔を けて評価した。低量のBPAとNP(0.1 mg/kg/日)への周産期曝露は、恐怖感を掻き立てる刺激(例:電気ショック)への感受性とモノアミン作用性の神経路の両方を回避不可能なほど影響を与えた。
子供と女性の毛髪の水銀レベル
1999〜2000年の全米健康栄養調査では、米国の1〜5歳の子供と16〜49歳の女性を対象に毛髪の水銀分析を通して、メチル水銀(Hg)への曝露を査定した。McDowellら(p. 1165) は、毛髪の総合Hgレベルの配分、また、毛髪のHgレベルと社会人口学的に見た特徴および魚の消費との関係について報告している。幾何学的に見た髪の平均Hgレベルは、子供で0.12 µg/g、女性で0.20 µg/gで った。魚を頻繁に消費する被験者の幾何学的な毛髪の平均Hgレベルを、魚を消費しない被験者と比較すると、女性は3倍高く、子供は2倍高かった。
バングラデッシュでの砒素緩和努力と疾病という負荷
これまで、バングラデッシュの飲料水における砒素汚染の影響を緩和するため多くの方法が提案されてきた。Lokugeら(p. 1172) は、砒素に関連している疾病と飲料水によって広がる感染病に対する砒素介入の影響を評価した。この介入は高レベルの砒素の曝露を受けている人たちには効果が るように見受けられるが、これは、曝露レベル、および砒素の低減と水に関連している感染症のリスク低減の効果性に基づいている必要が る。 ( p. A636のScience Selections も参照)
鉛、糖尿病、高血圧と腎機能
Tsaihら(p. 1178) は、標準的加齢研究の副標本を使用して、中年男性と老齢男性の腎機能の変化を鉛レベル、糖尿病、高血圧の基準的数値との関係において過去6年以上にわたって調査した。その結果、中年と老齢被験者の腎機能の衰えは、長期的な鉛の蓄積と循環する鉛の両方に依存していることが判明した。またその効果は、特に感受性の高いグループを構成する糖尿病と高血圧の患者において最も顕著で った。 ( p. A636のScience Selections も参照)
ニューヨーク市での農薬散布と喘息
2000年7月〜9月の間、西ナイルウイルス(WNV)を持つ蚊の方向を制御するために、ピレスロイド系農薬がニューヨーク市の住宅地で散布された。ピレスロイドへの曝露と喘息の悪化を関係付けている研究結果も るが、大規模な蚊制御プログラムにおける全体的な効果は査定されていない。Karpatiら(p. 1183) は、都市部の広範囲に広がるピレスロイド系農薬の使用が、喘息による救急治療室来院率の増加と関係が るか否かを評価した。WNV制御のためのピレスロイド散布の後、喘息による公立救急治療室来院率の増加は見られなかった。 ( p. A637のScience Selections も参照)
環境医療
塩化ビニル、肝細胞性ガンと肝硬変
肝細胞性ガン腫(HCC)と肝硬変(LC)は、塩化ビニルモノマー(VCM)が誘発する疾病としては確立していない。Mastrangeloら(p. 1188) は、VCM作業者で る患者とコントロール被験者中のHCCとLCの病因論の中で、VCMの役割、アルコール摂取、ウイルス性肝炎の感染、およびこれらの相互作用を評価した。VCM曝露は、HCCとLCに関しては独立のリスク要因で るように見受けられ、アルコール摂取とは相乗効果の関係に り、ウイルス性肝炎の感染に対しては追加的に作用する。
ヒトの毛髪と血液中のPCBと農薬
永続的な生物汚染物質への暴露測定手段として、ヒトの毛髪は、血液や脂肪組織のサンプルを超える利点が る。しかし、外因性汚染と内因性汚染の間の区別が困難で るため、毛髪サンプルには限界が る。Altshulら(p. 1193) は、毛髪と血液を使用して、選ばれた有機塩素系殺虫剤と57種類のポリ塩化ビフェニルの同異体を分析した。毛髪と血液ではp,p´-DDEレベル間で中程度から強度の相関関係(r = 0.8)が見られ、より持続性の高いPCB同異体では中程度の相関関係が見られたが、その他の有機塩素系殺虫剤では相関関係が皆無 るいは弱いもので った。
子供の健康
子供の鉛曝露と骨密度
骨粗 症とは、骨折に関連している骨中の無機質濃度(BMD)の低下を意味する。青年期にピークBMDが十分に達成できなかった場合に、骨粗 症を発症すると予測される。ラットを使用した研究で、Campbellら(p. 1200) は、高レベルの鉛曝露を受けている子供たちのBMDを低レベルの鉛曝露を受けている子供たちのBMDと比較した。仮定に反し、高レベルの鉛曝露を受けている被験者は、低レベルの鉛曝露を受けている被験者よりもBMDがはるかに高かった。鉛の影響を受けて成熟が早まった子供の骨は、究極的には、青年期に得られるピークBMDが低いという結果になる可能性が る。
母体と臍帯の血液中のPFOS
パーフルオロオクタンスルフォン酸(PFOS)、perfluorooctanoate(PFOA)、perfluorooctane sulfonylamide(PFOSA)等のフッ素化生物化合物(FOC)は広域に使用されている。いくつかの研究により、FOCは甲状腺ホルモンのレベルに影響を与えるために、齧歯動物の発達に有害で る可能性を持つと報告されている。Inoueら.(p. 1204) は、17〜37歳までの妊婦の母体と臍帯の血液サンプル中におけるFOC濃度を特定した。母体と胎児のPFOS濃度には強い相関関係が ったが、PFOSAは胎児と母体のいずれのサンプルからも検出されなかった。PFOS濃度と年齢層、出生時の体重、甲状腺を刺激するホルモン、チロキシンのレベルがゼロで ることには特に重大な相関関係は見られなかった。
PCBとヒドロキシル化代謝産物への胎児の曝露
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は最も大量に存在する汚染物質の一つで り、水酸基PCB(OH-PCB)代謝産物が人間と野生動物の両方の体内で形成される。動物実験によると、このOH-PCBが内分泌に関連する毒性を引き起こすという結果が出ている。Soechitramら(p. 1208) は、PCB曝露を受けている人たちの母体と臍帯の血液中におけるPCBとOH-PCBのレベルを測定し、PCBとOH-PCBの両方で、母体および臍帯のレベルに著しい相関関係が認められた。その結果、OH-PCBは母体中の血漿の約50%の濃度で胎盤を越えて胎児に到達することが明らかとなった。
トリハロメタンと胎児の成長
飲料水の殺菌による副産物への曝露に関連している妊娠期の悪影響の危険性は、現在でも明らかになっていない。Infante-Rivard (p. 1213) は、コントロール被験者と子宮内成長不全と診断された母親と新生児を対象として、トリハロメタンとCYP2E1 の遺伝子多形性、および5,10-メチレンテトロヒドロ葉酸還元酵素への曝露を、総合的および個別に調査した。その結果、トリハロメタンへの曝露が最高レベルの時は胎児の成長に影響を及ぼすが、これは全般的に感受性の高い新生児に限られるようで る。
[目次]
前回更新日:2004年7月13日
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