環境ニュース
夏の科学は熱い
多くの学生にとって、夏は短期の仕事をし、お金を少し稼ぎ、将来のキャリアの準備に役立つスキルを習得する時期だ。今月のNIEHS News(p. A94) は、高校生、大学生、またその教師を対象として研究所が主催する夏季研究プログラムについて報じている。研究所のプログラム:Summers of Discoveryや、全米に点在するNIEHSセンターで開催されるその他のプログラムは、今日の科学者による明日の科学者の育成を後援している。
全ての体系をまとめる考え方
地球とその様々な生態系を内部で相互に関連している1つの事象として理解しようという、画期的な考え方に基づいた試みが地球規模で進行している。Focus (p. A98) では、衛星の地球観測能力と地上のデータ収集システム等との連結を目指す全球地球観測システム(Global Earth Observation System of Systems)について説明している。このシステムは、広範囲にわたる自然の様々な力の相互作用をよりよく理解するための手段として構想されている。
海洋政策の一計画
米国海洋政策委員会(The U.S. Commission for Ocean Policy)は、21世紀の海洋政策(An Ocean Blueprint for the 21st Century)という最終報告書を発表し、大統領義務を果たした。しかし、その計画は非情な現実を映し出している。米国にとっては、焦点を絞った、首尾一貫した海洋管理政策が必要不可欠で るにもかかわらず、これが欠如しており、このような政策を策定・施行するにはさらなる努力が必要で る、と同報告書はまとめている。Spheres of Influence (p. A106)では、同報告書に記載されている提案や調査結果を説明している。
宇宙への水戦略。そして地球にも
宇宙飛行士は日々の生活用に多くの水を割り当てられてはいない。せいぜい半ガロン(約1.9リットル)程度で る。しかし、たったこれだけの水でも宇宙に持って行くには5万ドルほどもかかる。これだけ高額で ると、希薄な空気から水を作り出す方法を考案することが宇宙工学エンジニアの任務となってくる。Innovations (p. A110)では、宇宙旅行用の水生成技術を検証している。この技術は宇宙用で るが、将来、地球上で増加している水不足地域の援助に役立つ可能性も秘めている。
研究
将来的な大規模コホートとバイオバンクの調査
将来に向けてコホートとバイオバンクを作ることは、社会基盤研究に重要な長期投資を行うことで り、生物医学の研究に影響と機会を提供し続けることを意味する。
FosterとSharp (p. 119) は、これらのコホートやバイオバンクの付加は、大規模調査の被験者の中で占める割合はごく低い複雑な疾病の要因を隠し、その仮説の設定を限定するという危険性が ると論じている。生産性をもつ大規模投資は、仮説の設定と、被験者の各グループ内で頻繁に見られる遺伝子的および環境要因の特定に、さらに高い効果を持つことが必要で る。
発育段階におけるピレスロイドの神経毒性
世界中で販売されている殺虫剤の25%はピレスロイド系で る。Shaferら(p. 123) は、潜在的年齢別および発生段階におけるピレスロイドの神経毒性に関連したデータを検討している。多くの調査は、不適切な調査デザイン、統計分析の諸問題、混合製品の使用、コントロールの不足等の原因により、不的確・不十分な結果に終わっている。今後の発生段階の神経毒性の調査には、神経系発達のシステムの理解を深める手法の採用が必要で る。
ブタ集中飼育所内の空中に浮遊する薬物抵抗性バクテリア
ブタ飼育所内の空気が、抗生物質抵抗性のバクテリア病原体への曝露源となっているか否かは不明で る。Chapinら(p. 137) は、ブタの集中飼育所内の空気サンプルを採取し、エンテロコッカスとコアグラーゼ陰性ブドウ球菌を分析・分離して、エリスロマイシン、クリンダマイシン、バージニアマイシン、テトラサイクリン、バンコマイシンへの抵抗性を調査した。バクテリアの種類を問わず、分離物の98%が少なくとも2種類の抗生物質に高レベルの抵抗を示した。これらの飼育所の空気を吸い込むと、多剤抵抗性のバクテリア病原体がブタからヒトへと転移する可能性が る。(p. A116のScience Selectionsも参照)
トポフィリアと生活の質
Ogunseitan (p. 143) は、個人がどのような生態系の要素と環境修復を好むかは、生活の質(QOL)と関連しているという仮説を検証した。トポフォリアに関するアンケートと、世界保健機構のQOL計器で、ヒトから回答を得た。要素分析で、トポフォリアの4つの領域(生息地の多様性、共感覚傾向、認知的課題、周知)とQOLの4つの領域(身体的、精神的、社会的、環境的)が解明された。Synesthetic tendencyがトポフォリアの領域の中では最強で、精神的側面がQOLの領域の中では最強で った。これらの結果は、環境の質とヒトの健康を結び、既存環境を回復することを目標としたデザインの実施に使用できる新しい枠組みを提唱している。(p. A117のScience Selectionsも参照)
発生期における少量PBDE-99への曝露
ポリ臭化ビフェニルエーテル(PBDE)は、幅広く使用されている持続性難燃剤で る。Kuriyamaら(p. 149) は、Wistar damラットをPBDE-99に曝露させ、未成熟ラットの基本的運動能力と成熟雄の生殖能力を妊娠6日目に評価した。発生期の少量PBDE-99への曝露は、子供に活動過多を引き起こし、精子形成機能に恒常的な障害を与えた。この研究での使用量は、公表されているヒトの乳房脂肪組織での最高レベルのおよそ6倍〜29倍で る。
母体のメチル水銀摂取量
米国環境保護局(EPA)は、in utero曝露による子供への影響に基づき、メチル水銀の基準量を一日0.1 オg/kgと規定した。EPAが使用した再調整分量は、臍帯内血液と母体血液の水銀濃度比率を考慮していなく、妊娠と第3期のパラメータの中心傾向推定の問題を解決するものではない。Stern (p. 155) は、再検討・再計算を通じて、この再調整分量を再評価した。胎児の臍帯血液中水銀濃度58オg/Lに相当する母体摂取量の百分順位の下から5位と1位は、それぞれ一日0.3 オg/kgと0.2 オg/kgと見積られた。百分順位の99位の数値は、EPAの推定値の半分で った。
金属と末梢性血管疾患
金属曝露は粥状硬化症を引き起こす可能性が る。1999年〜2000年の全米健康栄養調査(NHANES)では、血中カドミウムと鉛が末梢性血管疾患(PAD)と関係付けられた。Navas-Acienら(p. 164) は、1999年〜2000年NHANESでの年齢が40歳以上だった被験者を対象とした横断分析調査で、尿中のカドミウム、鉛、バリウム、コバルト、セシウム、モリブデン、アンチモン、タリウム、タングステンとPADの関係を評価した。今回の米国のサンプルでは、尿中のカドミウム、タングステンはPADと関連しており、またアンチモンはPADとの関連の可能性が見られたが、一般的なサンプルでは、尿中の他の金属はPADと関連していなかった。
炭素と炭素/鉄の細胞毒性
Longら(p. 170) は、炭素粒子中の鉄が、食細胞活動に続いて起こるヒト単核細胞誘導性マクロファージ(MDM)細胞の構造の変化を促進する、という仮説を検証した。(非食細胞的制御としての)ヒトMDMやTリンパ球の培養細胞を炭素や炭素/鉄の1オm合成炭素基粒子に曝し、透過型電子顕微鏡で観察した。結果から、類似サイズの粒子の中でも、生物活動は粒子の物理化学特性の機能によって大きく異なる可能性が示された。
PCB、p,p´-DDEと精子クロマチンの構造
Rignell-Hydbomら(p. 175) は、ポリ塩化ビフェニル(PCB)と、ジクロロジフェニルジクロロエタン(DDT)の主要な代謝物質で るジクロロジフェニルジクロロエチレン(p,p´-DDE)への曝露が、スウェーデンに居住する漁師のヒト精子クロマチンの構造の変化と関係している、という仮説について調査している。著者らは、2,2´,4,4´,5,5´-六塩化ビフェニル(CB-153)とp,p´-DDEの血漿レベルを明らかにし、精子クロマチン構造アッセイ(SCSA)を使用して、精子DNA/クロマチンの完全度を査定した。CB-153のもっとも低い5分位数では、他の物質の5分位数と比較すると、DNA断片化率(%DFI)が有意に低いことが確認された。統計学的には有意ではないが、%DFIとp,p´-DDEの間にも類似の傾向が見られた。
レメディエーション効果の生物的活動
バイオレメディエーションは通常、対象となる化学物質の除去で評価される。哺乳類生物体への毒性のレメディエーション効果については まり知られていない。GaneyとBoyd (p. 180) は、脱塩素によるレメディエーションの実行の前と後に哺乳類細胞バイオアッセイを使用してポリ塩化ビフェニル化合物への生物学的反応を評価する手法について記述している。結果を見ると、一定の範囲における哺乳類細胞での生物学的活動に対するレメディエーションの影響を評価できる可能性が り、毒性に対するレメディエーション作業の効果の予測も可能で ることが分かる。
微生物バイオマーカー
マサチューセッツ州のニュー・ベッドフォード港(NBH)は、重度に汚染されており、米国環境保護局から重要保護地域の指定を受けている。港における溶解性と非溶解性の生物種の様々な形質転換および形成のメカニズムを通じておこる汚染物質の生存と分布の原因に微生物が関与していると考えられている。Fordら(p. 186) は、微生物をエコトキシコロジーのツールとすることを最終目標に挙げ、毒性汚染物質暴露の反応として見られる微生物生息の構造と機能の変化について論じている。
米国の尿中クレアチニン濃度
尿のバイオモニター・データは通常、スポットサンプル間の希釈の相違を是正するために、一定のクレアチニン濃度に調整される。従来、この方法は多様性の まりない人口グループで使用されてきた。Barrら(p. 192) は、分類した曝露状況に応じて、複数の人口統計グループ中のクレアチニン濃度の変化が与える影響を調査した。人口グループの多重回帰分析では、未調整分析濃度は、尿中クレアチニンを別の独立した変数として加えた分析に含めた。この手法は、モデル中の他変数の統計学的な有意差が、クレアチニン濃度の効果とは無関係となりうる。
空気汚染と粥状硬化症
長期にわたる環境中空気汚染への曝露は、心臓血管の罹病や死亡と関連付けられている。動物のデータでは、空中に浮遊する微粒子(PM)は粥状硬化症の原因となる可能性が示されている。Knzliら(p. 201) は、粥状硬化症と、2つの臨床試験において微粒子のうち直径が2.5オm以下の空中のPM(PM2.5)への曝露との関連について調査した。ベースライン・データには亜臨床的粥状硬化症の測定基準で る頸動脈の脈管内膜-中膜の厚さ(CIMT)の評価も含んでいる。著者らは、空中PM2.5の年間平均濃度を決定するために、被験者の居住地域に地理コードを付けた。基本的には、60歳以上、女性、喫煙歴なし、脂肪削減治療を受けている被験者でPM2.5とCIMTの関連が大きく、女性に最も強い関連性が見られた。(p. A116のScience Selectionsも参照)
環境医療
中国伝統医薬における砒素曝露
慢性砒素毒性は、おもに不注意による摂取 るいは職業曝露によって起こるが、医薬摂取によっても起こりえる。LeeとBebb (p. 207) は、子供のときに10年間にわたり、砒素を含んだ中国の伝統医薬の治療を受けた53歳の男性のケースを検証している。この患者は砒素曝露の開始後、10歳のときにボーエン病と診断され、47歳のときに肺に進展段階の小細胞がんが発生した。砒素誘発性ボーエン病と診断された患者は、後続の悪性腫瘍の発生を監視するために、頻繁に検診を受けるべきで る。
子供の健康
クロルピリホス集積のパターン
Horeら(p. 211) は、プロによる家のひび割れ処置後2週間にわたり、患者自宅でのクロルピリホスの分布を調査し、その家庭の子供が吸収したクロルピリホスの量を特定した。著者らは、屋内の空気中と物体表面、ぬいぐるみ、子供たちから収集した朝の尿サンプル中の農薬量を測定した。ぬいぐるみの中と表面についたクロルピリホスの濃度は期間中増え続け、累積吸収/吸収過程を証明した。子供が吸収したクロルピリホス量には有意な増加は認めなかった。
有機塩素系農薬と男性性器異常
Bhatiaら(p. 220) は、p,p´-ジクロロジフェニルジクロロエタン(DDT)とその主要代謝物質で るp,p´-ジクロロジフェニルジクロロエチレン(DDE)の血漿レベル、および1959年〜1967年に発生した妊娠女性の縦断コホート中における潜在睾丸と尿道下裂のケースコントロール研究を行った。全体として、著者らは結果とDDTやDDEの血漿測定値の間に、統計的に有意な関係は見出さなかった。
塩素化副生成物と出産時の悪影響
Toledanoら(p. 225) は、1992年〜1998年にイングランドの海岸近辺の3地域で、トリハロメタンの総量(TTHM)および個々のTHMと、死産と誕生時の低体重の関係について調査した。変量効果モデルを使用した3地域合同の予測は、TTHMが高い地域でも小さな超過リスクを示した。個々のTHMの中では、クロロホルムがTTHMと類似のリスクパターンを示した。調査結果からは、母親が高TTHM地域に住んでいる場合、死産との関連が示唆されるが、今回の結果を別の解釈や飲料水が原因で る可能性で るとする説と区別するためには、更なる研究が必要で る。
トキシコゲノミクス
血液遺伝子発現プロフィールと金属煙曝露
微粒子状の空気汚染物質は、肺と気管の炎症の両方を引き起こすことが るが、微粒子が全身の炎症反応を誘発することを示すデータは まりない。Wangら(p. 233) は、金属煙に職業曝露する前後に、金属組立業者からの全血総RNAを使用して血液遺伝子発現を分析した。粒子曝露に反応して発現が変化した遺伝子は、炎症反応、酸化ストレス、細胞内信号導入、細胞周期、プログラム細胞死にクラスタリングされた。
[目次]
前回更新日:2005年1月19日