環境ニュース
MITのトキシコゲノミクス
研究者たちは、環境に関連した疾病と遺伝子レベルで戦う可能性を追求し続けている。今月のNIEHS News (p. A234)では、マサチューセッツ工科大学トキシコゲノミクス・リサーチセンターで行われている研究に焦点を当てている。同センターの研究者たちは、DNA修復機能と肝臓がんを引き起こす可能を持つ毒性菌類の撲滅に焦点を当て、実現に大きな期待が寄せられている集中型データシステムで使用するための遺伝子発現プロファイルの標準化を行うために複数の他機関の研究者と共同作業を進めている。
車の衝突
発展途上国では、自家用車の数が急増している。これまでの廉価でシンプルな移動手段から大量の個人ドライバーで構成されるシステムへと移行したことにより、各国でも特に人口密度の高い都市で独特の環境問題を作り出している。Focus (p. A238)では、これらの移行期社会の住人が直面している課題を検討し、政府や私的機関による対応の様子の一部を検証している。
予期しなかった環境への影響
自動車の発明によって私たちの生活習慣は変わり、もはや後戻りはできない。個人による車の所有に大きな利点が ることは否めないが、その反面、いくつかの副作用が ることも認めざるを得ない。Spheres of Influence (p. A246) では、私たちが車の個人所有に依存することによるコストと影響を検証し、人類全体が将来きれいな空気のもとにドライブできるように、これらの課題に対処するための現行の戦略と提案されている戦略について説明している。
概念の理解
ガソリン価格高騰の時代となったが、炭化水素燃料に依存しない個人別の移動手段の大規模な供給まで とどのくらいかかるので ろうか?代替燃料の提案者たちは、日進月歩の努力を進めている。Innovations (p. A250) では、現在のSUVを土台にし、ハイブリッド水素燃料電池を使用する中型のハイパーカー®という車における1つの可能性を検証している。中型のファミリーカーが人気を博している現代、これが人類が待っていた新しい車となれるだろうか?
研究
環境問題:人種や民族の違い
Greenberg (p. 369)は、ニュージャージー州の住民を調査し、ヒスパニック以外の白人と英語を話すヒスパニックの人々は、アジア人やスペイン語を話すヒスパニックの人々よりも、環境問題を重視していることを明らかにした。活動の必要性や環境運動の支援という面でも、人種・民族による違いが見られた。アジア人とスペイン語を話すヒスパニックの人々は、米国で最も急増している人種グループで る。文化変容によって環境汚染問題が次第に大きくなることも考えらるため、各人種・民族における環境に関する考え方をよりよく理解することは重要で る。
空気汚染と妊娠への影響
環境中の大気汚染による出生時への影響に関する調査は数多く行われてきた。Srámら(p. 375)は、空気汚染による副作用現象を特定したが、その度合いは各出生時によって違っていた。空気汚染は呼吸器障害による死亡や出生時の体重と関係しているが、空気汚染と早産や子宮内胎児発育遅延の間の因果関係を特定するには証拠が不十分で る。出生異常に関しても、現在の段階で結論を出すには証拠が不十分で る。
毒物学と化学混合物
化学混合物の評価は、毒物学者や政府当局、また一般大衆にとって複雑な問題で る。Monosson (p. 383)は、毒物学と政府機関の必要性との関連を検証している。従来、化学物質に関する政府の規制と毒物学研究は、個々の化学物質に重点を置いてきた。化学混合物の評価は、現在のところ、既存データベース中に る単一の化学物質の調査結果を基にして行われている。しかし、関係政府機関と毒物学を含む多分野の科学者の努力が組み合わさり、化学混合物の科学と評価は進歩しつつ る。
ヒトの尿中のビスフェノールAと4-ノニルフェノールの濃度
ビスフェノールA(BPA)は、ポリカーボネート・プラスチックの製造に使用され、4-ノニルフェノール(NP)は、広く使用されている非イオン性の界面活性剤の製造に使用されている。Calafatら(p. 391)は、米国の成人から収集した保存尿サンプル中のBPAとNPを測定した。サンプル尿の95%から、0.1 µg/L以上のBPAが検出され、サンプル尿の51%から、0.1 µg/L以上のNPが検出された。この研究により、人口統計学的に多様なグループにおける人体中のBPAとNPのレベルを示す参考資料が初めて得られた。
過塩素酸塩と北米産コイの甲状腺機能
過塩素酸塩は、哺乳類における甲状腺のヨード化物摂取を抑制する強力な作用を持つ環境汚染物質で るが、その水中生物への影響は不明で る。Craneら(p. 396)は、環境中に発生した過塩素酸塩アンモニウム曝露が、北米に生息するコイ(学名:Pimephales promelas)の受精から産卵までの28日間の発達に与える影響を調査した。結果を見ると、環境中の過塩素酸塩アンモニウムの濃度の違いが稚魚の甲状腺機能に影響を与えることが判明し、この影響は発育遅延と関連している可能性も る。
予防理論とリスクの概念
電磁場(EMF)による健康への悪影響の可能性による公共衛生の主要問題が、欧州全般で懸念されている。科学者たちがEMFによる健康問題の可能性を排除できないために、予防措置につながる論理に関して大きな議論が巻き起こっている。WiedemannとSchützetら(p. 402)は、予防措置は懸念を高め、EMF関連のリスクの概念を拡大する可能性が ることを示す2つの調査結果を提示している。予防措置の決定の際は、従来の考えかたに対して疑問を引き起こすという影響を考慮するべきで る。(p. A255のScience Selectionsも参照)
世界貿易センターの事件による呼吸器障害
Reibmanら(p. 406)は、以前は健康で った世界貿易センター(WTC)の周辺住人による持続性の呼吸器の症状や異常の件数が、現在では増加しているか否かについて調査した。曝露地域住民とコントロール地域住民を比較するために、アンケート調査と肺活量測定データの調査を使用した。2つのグループの間で、肺活量には違いが見られなかった。しかし、アンケート調査のデータは、曝露地域では新しく始まった持続性の呼吸器障害率がコントロール地域と比較すると増加していることを示した。
ETS曝露と尿中ホルモン・マーカー
Chenら(p. 412)は、環境タバコ煙(ETS)が、妊娠を希望している喫煙しない既婚女性の尿中pregnanediol-3-glucuronide(PdG)と結合型エストロン(E1C)で特徴付けられる生殖ホルモン・プロフィールに影響を与えるか否かについて調査した。ETS曝露は、非受胎期に尿中E1Cが有意に低いことと関係付けられ、ETSの反生殖機能が抗エストロゲン効果の一部として働くことを示唆している。(p. A254のScience Selectionsも参照)
塩素化の副産物と膵臓がん
塩素消毒による副産物(CDBP)は水の塩化処理過程に生成され、膀胱がんのリスクを高めるとされている。Doら(p. 418)は、母集団に基づいて年齢と性別を合わせた膵臓がんのケースのコントロール研究の結果を報告している。塩化副産物曝露量は、これまで住んできた居住地を飲料水中のCDBPレベルと関連付けることにより推定された。回帰分析では、レベル濃度が高くなると膵臓がんのリスクも高くなるという証拠は得られなかった。帰無調査も、膵臓がん発生までの潜伏期を3年、8年、13年と仮定して行われ、結果を得た。
フタル酸とPCBの相互作用
人類はフタル酸とポリ塩化ビフェニル(PCB)曝露を受けているが、PCBはフタル酸の新陳代謝をつかさどる酵素を抑制する可能性が る。Hauserら(p. 425)は、フタル酸およびPCBと受胎率が低いカップルの男性の精子との相互作用を調査した。精子の低運動性に関しては、モノベンジルフタル酸とPCB-153の間の添加作用がさらに大きかった。またモノブチルフタル酸(MBP)とPCB-153の間の添加作用よりも大きな作用が見られ、MBPと総PCBの間の相互作用を示唆していた。
Xenoestroge(環境エストロゲン)がカルシウム流入とプロラクチン分泌を誘発
Xenoestroge(XE、環境エストロゲン)はエストラジオール(E2)等の内因性エストロゲンと相互に作用し、通常のエストロゲンシグナリングを妨害する。Wozniakら(p. 431)は、膜に高レベルのエストロゲンレセプター-αを持つ下垂体の腫瘍細胞株に対するE2と何種類かのEXの影響について調査した。各XEとも、一時的で独自なCa2+の上昇のパターンを示した。またE2と各XEが、独自の時間・濃度依存性のプロラクチン分泌のパターンを発生させた。ごく低い濃度では、XEはE2に類似のメカニズムを通じて、独自のパターンと能力を伴った誘発性の細胞内Ca2+の増加によりPRL分泌を仲介する。
心臓の再分極と空気汚染
粒子状の大気汚染物質は、心臓血管の罹病や死亡と関連付けられている。Hennebergerら(p. 440)は、冠動脈心臓疾患の患者は空気汚染との関連で心臓の再分極が起こるという仮説を検証した。心電図の結果は、有機炭素曝露に反応してQT間隔が延び、蓄積モードと呼ばれる超微粒子とPM2.5(直径2.5µg未満)粒子によってT波の振幅が減少し、これに対応してT波の複雑性が高まったことを示している。この研究は、空気汚染の直接影響が心臓死の重要要素となる証拠を提示している。(p. A254のScience Selectionsも参照)
羊の細胞中のアルキルフェノールとジエチルヘキシル・フタル酸
Rhindら(p. 447)は、牧場で下水肥料(処置)または無機飼料(コントロール)を与えて飼育した経産雌羊とその子羊から細胞を選定し、そのアルキルフェノールとフタル酸について調査した。フタル酸は、コントロールと処置動物の細胞で比較的高い濃度で検出された。下水肥料は、細胞中の一定高濃度のアルキルフェノールとフタル酸とは関連していなかった。結果から、牧場での下水肥料の使用によって羊や他の動物の細胞内の上記物質の濃度が高まる可能性はないと推定される。
肺における極細カーボンブラックのVEGFへの影響
極細カーボンブラック(ufCB)は、炎症誘発反応を引き起こし、肺胞毛細血管の新生度を高める。Changら(p. 454)は、下血管内皮増殖因子(VEGF)は血管細胞新生要因で るが、マウスにufCBの気管内滴を施して、ufCBに誘発される肺胞毛細血管の新生におけるVEGFの役割を検証した。結果から、ufCBがVEGFの生成を誘発することが判明した。ufCBによるVEGF誘発は、活性酸素依存経路を通じて作用する。
乳中のドウモイ酸移行
ドウモイ酸(DA)は、珪藻類のPseudo-nitzschiaによって生成される神経毒で る。DAは濾過摂食生物の汚染能力が り、摂食によって高い栄養段階へと移行する。ヒトと海洋哺乳類の中毒はDAに起因しているとされてきたが、DA曝露を受けた母から授乳を受ける子供に移行するか否かは証明されていない。MaucherとRamsdell (p. 461)は、強化乳から授乳中の新生ラット血漿へのDAの移行および8時間後のDA保持率は曝露を受けた母体の乳の方が血漿より高いことを立証した。
DNAPLソースゾーンの浄化:レビューと評価
通常、飽和状態に る物質に原液状態のVOC(DNAPL)が浸透すると、地下水源が長期的な分解段階におかれ、高度に汚染されたゾーンを作り出す。Christら(p. 465)は、実験室およびフィールドでの積極的なソースゾーン除去を微生物脱酸素化の長期サポートと組み合わせた対処戦略の開発の必要性を 付ける研究結果について説明している。
環境医療
女性の職業別鉛暴露レベルの違いによる影響
Popovicら(p. 478)は、職業やライフスタイルが骨中および血中の鉛レベルに及ぼす影響を検証した。製錬工場の元従業員と未曝露者がサンプルを提供し、ライフスタイルと医療記録に関するアンケートに応じた。曝露者のグループは頸骨と血中の鉛濃度が有意に高く、更年期の開始年齢が低かった。女性の血中鉛レベルは、曝露が停止した後も長年にわたって続いていた。曝露を受けた女性は、ほとんどの男性労働者よりも骨中鉛濃度が低かった。男性のデータから外挿した既存の曝露モデルは、女性には的確でない可能性が る。
オフィス・ワーカーの呼吸器障害
Cox-Ganserら(p. 485)は、水による破損を受けたオフィス・ビルに関係した呼吸器疾患とその社会的影響に関する研究で、アンケート調査を行った。米国の成人人口との比較で、ゼイゼイという喘ぎ、一生不治の喘息、一時的喘息の割合は、2.2〜2.5で、成人後に罹患した喘息は3.3、職場を離れて症状が改善した喘息は3.4で った。呼吸器系の問題が病気による欠勤の1/3を占め、職場に関連した呼吸器障害による欠勤はそれ以上で り、罹病と失われた労働時間は、従業員にも雇用側にも負担で った。
GI域の鉛弾
GustavssonとGerhardsson (p. 491)は、原因不明の血中鉛濃度の上昇(550μg/L)によって、倦怠感、疲労感、胃腸(GI)の不快な症状で悩んでいる女性のケースを紹介している。鉛暴露源は特定できなかったが、この女性は時々捕獲動物を食したという。 部のレントゲン写真によると、上行結腸に6mmの金属の物体が確認された。この物体は何で るかが特定される前に、自然に結腸から放出された。患者の血中鉛濃度は徐々に低下していき、諸症状も解消した。著者らは、原因不明の血中鉛濃度の上昇を調査する研究者諸氏には、 部のレントゲンをお勧めする。
子供の健康
子宮での有機燐化合物殺虫剤曝露による誕生時の結果
最近行われた3つのコホート研究で、妊婦の有機燐化合物殺虫剤曝露(バイオモニタリングで判断)と出生時の結果の関係が評価された。Needham (p. 494)は、曝露シナリオと曝露評価の面でこれらの研究結果を比較している。これらの研究はどれも、異なったバイオモニタリングを使用しているため曝露と出生時の結果との関係が異なってくる可能性が ることから、焦点を曝露の評価に当てている。
屋内で発生した微粒子の影響と屋外で発生した微粒子の影響
人々は時間の大部分を屋内で過ごし、屋内で発生した微粒子と屋外から浸入した大気中の微粒子に曝露している。Koenigら(p. 499)は、喘息を持つ子供について、PM2.5(空気力学的直径で2.5µg未満の微粒子)への身体曝露を屋内生成(Eig)と大気中生成(Eag)の要素に分解する効果性を推定する予測モデルを作成した。EigとEagは、気道の炎症のマーカーで る呼気中の一酸化炭素(eNO)の変化と比較された。大気中で生成されたPM2.5微粒子は、eNOの増加と一貫して関連付けられ、屋内生成の微粒子はeNOとの関連が比較的小さかった。
尿中OP代謝物質の変化
農場作業者の子供たちは、有機燐化合物系(OP)農薬への曝露のリスクが高い。Lambertら(p. 504)は、別種の農産物を生産しているオレゴン州の3つの地域社会に住む2〜6歳の子供達から収集したシリアル尿サンプル中のリン酸ジアルキル濃度を定量化した。通常の代謝物質で るdimethyldithiophosphateの中央値は、レファレンスグループとの比較で3つの農業地帯の子供たちから収集した尿サンプルの方が高かった。サンプル提供者内の一時的ばらつきを考慮すると、長期的・累積曝露を正確に特徴付けるためには複数の尿サンプルが必要で ることが分かる。
年齢別の発ガン性の違い
Hattisら(p. 509)は、齧歯動物のデータを利用した予測の不確実性を考慮しつつ、ヒトの生涯にわたる曝露リスクを査定する意味について検討している。不確実性の複合効果をモンテカルロ分析を用いて評価した。分析された不確実性の中でも、齧歯動物の一生のうちの各段階をヒトの年齢や曝露期に当てはまるマッピングが定量的にみて最も重要で る。体重1kgにつき一定ミリグラムの一般的な突然変異性発がん物質(1種類)への生涯曝露による人口グループの平均リスク推定値は、成人期のみの曝露から推定される数値の2.8倍で る。