環境ニュース
魅惑の地の研究
私たちの健康が環境汚染物質によって影響を受けることは否めない。私たちの健康に影響を及ぼす外的問題の増加に伴い、地域社会の福祉サービスがこれらの問題の解決に果たす役割がますます重要となっている。今月のNIEHSニュース(p. A304)では、ニューメキシコ環境健康科学センター(New Mexico Center for Environmental Health Sciences)がこのLand of Enchantment(魅惑の地、ニューメキシコ州の愛称)の住民の将来をより健康なものにすることを目的とした地域社会計画のため、肺疾患、心血管疾患、皮膚がんの調査を適用している様子を紹介している。
近所の遊び場の不利点?
「ホーム(家庭、故郷)」という言葉からは安楽と安全を連想する人が多い。しかし残念なことに、誰しもが必ず安楽と安全をもたらす住居環境で生活するという贅沢を享受できるわけではなく、住人の健康を脅かす粗悪な住居環境も多い。Focusでは、健康の格差に直接つながる環境の格差に焦点を当て、遊び場の不均衡を減らし、より多くの家族が健康的な近隣の遊び場を利用できるようにデザインされた斬新でプロアクティブなプロジェクトの数々を検証している。
全体的視野から見た住居
全ての住居に危険が同じように起こるわけではないが、それらが対処されれば環境衛生にとって長期的な利点となる可能性が る。住居の健康危険要因の多くが相互に関連していることが判明した現在、住居環境衛生産業は対処策として、それぞれの問題に個別に対処するよりも複数の問題を同時に発見・解決できる問題意識と多方面の知識を有する専門家の育成を開始した。Innovations (p. A320)では、この新しい全体的視野から見た住居危険要因の発見・対処法の発展の様子を説明している。
研究
染色体異常とがんリスク
末梢血液リンパ球中の染色体異常(CA)をがんリスクのマーカーとしてより良く特徴付けるためには、さらなるデータが必要で る。Rossnerら(p. 517) は、CA分布を百分順位で分類しチェコ国立がん登録所に登録されている11,834名の被験者の細胞遺伝学的記録を評価した。CAレベルの高低を基準にした調査では、がんの発生率と染色体型異常の間には全体的に有意な関連が見られた。胃がんはCAの合計頻度と大きく関連していた。CA頻度とがんリスクの関連は、染色体型異常に限定されている可能性が る。
水銀、食物網、海洋哺乳類
BoothとZeller (p. 521) は、フェロー諸島の海洋生態系におけるメチル水銀のフロー・モデルを作成し、ゴンドウクジラと魚類の消費によるヒトの平均的曝露量と、現行の耐容週間摂取量(TWI)を比較した。結果から、フェロー諸島住民の摂取食物中のメチル水銀量が多いことはクジラ消費が原因で り、気候の変化が状況を悪化させている可能性が高いことが判明した。現在のクジラ消費量に基づいて計算すると、水銀摂取量を世界保健機構のTWIレベル未満に抑えるためには、その環境への流入を50%削減する必要が る。
発育過程におけるラットのクロルピリホス曝露
Aldridgeら(p. 527) は、出産後1〜4日のラットに、全身中毒を引き起こす一歩手前の1mg/kg/dayのクロルピリホス(CPF)を投与した。CPF曝露を受けた成育後の動物は、セロトニン機能に関連する行動テストで異常を示した。従来から半中毒を引き起こすと考えられてきた新生期のCPF曝露は今回の結果から、動物のうつ病の状態に類似するセロトニンに関連した行動に持続性変化をもたらすことが示された。
ヒトの神経行動の影響とスチレン曝露
スチレンの長期曝露は、選択反応時間、色の識別、配色作業への影響を持つ神経系に影響を及ぼす可能性が る。Benignusら(p. 532) は、曝露量(バイオマーカーからの推定)と反応時間および色覚への影響の関係に関して、メタアナリシスを行った。
スチレン曝露の増加と選択反応時間の増加の間、およびcolor confusion indexの増加の間でも統計的に有意な関係が立証された。同じ曝露の経緯として、男性ではcolor confusion indexが年齢の1.7倍まで増加することが予測されている。
ヒトの血中フルオロケミカルの経年比較
Olsenら(p. 539) は、ヒトの血液中のパーフルオロオクタンスルフォネート、パーフルオロオクタン酸、その他5種類のフルオロケミカルの濃度が1974年から変化しているか否かの調査を行った。血液サンプルは、大規模集団健康調査のボランティア参加者から1974年(血清)と1989年(血漿)に採取されたもので る。ペア分類されたサンプルを統計的に分析した結果、血清濃度は1974年より1989年が有意に高いことが判明した。また、1989年のデータを、2001年に採取された血清サンプル中のフルオロケミカルの平均濃度と比較したところ、1件の例外を除いては、1989年および2001年のサンプルにおいてフルオロケミカルの平均濃度に有意な差は見られなかった。
グリオーマと女性の農薬曝露
男性農民の脳がんの過剰罹病は報告されているが、女性に焦点を当てた研究は数少ない。Carreónら(p. 546) は、成人女性341名のグリオーマ患者と528名のコントロールを対象として、農村地帯での曝露の影響を評価した。年齢、教育程度、農村居住年数を加味調整した結果、著者らは、砒素剤、安息香酸、カルバミン塩酸、chloroacetanilide、ジニトロアニリン、無機物、有機塩素系物質、有機リン酸化合物、フェノキシ基、トリアジン、尿素基やエストロゲン様殺虫剤の曝露について、グリオーマとは何らの関連性も無いことを明らかにした。
汚染された養殖鮭のリスクに基づいたアドバイス
養殖されたアトランティックサーモンに何種類かの高濃度有機汚染物が見つかっている。Foranら(p. 552) は、養殖鮭と非養殖鮭のダイオキシン曝露におけるがんに関連する健康リスクとがんに関連しない健康リスクに関する情報を提示している。著者らの分析は、ダイオキシン様化合物の耐容摂取量と、ヒトのダイオキシン曝露のリスク推定値に基づいて行われた。養殖鮭を比較的低頻度で消費した結果、ダイオキシンとダイオキシン様化合物の大量曝露を生じ、それにより健康リスクが高まり始めた。
鶏肉製品中の抗フルオロキノロン性カンピロバクター
2002年2月、米国の鶏肉加工企業2社が、群れ単位の処置でのフルオロキノロンの使用を中止すると宣言した。その1年後、Priceら(p. 557) は、これら2社の鶏肉製品と抗生物質使用の全面的中止を宣言した別の2社の鶏肉製品における抗FQ性カンピロバクターの発生率を比較した。結果を見ると、抗生物質非使用の2社は汚染度が特に高くなく、従来型の2社の製品は抗FQ性カンピロバクター汚染度が高かった。抗FQ性は、FQ選択圧力が存在しないときに持続する可能性が り、これにより従来報告されているよりも食物汚染度は高い。(Science Selections, p. 325も参照)
Haddonマトリクスと公衆衛生の準備
州政府と地方自治体は、公衆衛生への脅威に対する準備、その認識と対応においてかつてない困難に直面している。公衆衛生の準備度と対処方法は、意図的な攻撃、自然災害、人が引き起こした事故に対して類似のコンセプトで捉えることができる。連邦政府は、パラダイムとして全種類危険対応モデルを採択したが、その理由は、多様な状況に応じた複雑な準備を行う必要性が削減されることに る。しかし実際には、公衆衛生関連の準備には更なる複数のモデルが必要で る。Barnettら(p. 561) は、この目的のために、障害防止と対応戦略に使用される概念モデルで るHaddonマトリックスの使用を拡大するよう提案している。
ブタ飼育所空気の外部排出の影響
Schiffmanら(p. 567) は、ブタの舎飼い飼育所が風上になった場合に、飼育所内の空気が様々な風速で届く位置で被験者を曝露させた。血圧、体温、心拍数、呼吸数、肺機能、鼻の炎症、分泌型免疫、気分、注意力、記憶の各数値は、空気の質と相関関係に った。ブタ飼育所から風下に流れることが予期される飼育所内の悪臭に短期間曝露されると、健康なボランティアの人たちに臨床的に重大な症状を引き起こす可能性が考えられる。
環境医療
アスコルビン酸塩涸渇とニッケルの発がん性
ニッケル化合物はヒトの呼吸器系にがんを、実験動物に腫瘍を引き起こす。SalnikowとKasprzak (p. 577) は、直接の遺伝子毒性効果がニッケル発がん性の中心で るという前提に挑戦し、たんぱく質とその他の分子で金属化合物を生成すると、細胞のホメオスタシスが変わり、細胞選択条件に変形表現型が加わるという説を提案した。著者らは、慢性ニッケル曝露によるアスコルビン酸塩の涸渇は、肺細胞に有害で、肺がんにつながる可能性 ると提唱している。
職業感染によるヒストプラズマ症の発症2例
Huhnら(p. 585) は、イリノイ州における急性ヒストプラズマ症の発症2例の原因とリスク要因について研究した。結果から、 エーロゾル化表土と粉塵のもとで作業をしていた労働者は、ヒストプラズマ症感染のリスクが増大することが判明した。鳥やこうもりの糞で汚染されている危険性が る地域で作業する労働者は、人体保護装置を身に付け、粉塵管理技術を使用するべきで る。
子供の健康
発育期の脳に与えるメチル水銀毒性の脅威
発育期のメチル水銀曝露の主な原因は、妊娠期の女性による養殖や非養殖の水銀汚染海産物の消費に る。Trasandeら(p. 590) は、全米血中水銀有病率データを調査し、毎年316,588〜637,233人の子供達が、生涯取り戻すことのできない知力の喪失と関連するレベルで る5.8 µg/Lを超える量の水銀を臍帯の血液中に有していると断定した。これによる生産性の低下がメチル水銀毒性による大きな危害で り、その損害額は年間87億ドル(22〜438億ドル、単位はすべて2000年を基準とした米ドル)にも及ぶ。この合計額のうち、毎年13億ドル(1〜65億ドル)が米国内の発電所からの水銀排出によるものだとされている。
子供のIQと残存血中鉛
米国では月齢で18〜30ヶ月に起こるピーク血中鉛濃度の増加は、IQが安定し、測定可能になる年齢4〜6歳のIQスコアを低める原因だと考えられている。Chenら(p. 597) は、約2歳のときに高血中鉛濃度(20〜44 µg/dL)の治療を受けた子供たちのデータを分析し、その子供たちが約7歳となるまでの連続IQテストや血中鉛の数値を追跡調査した。子供たちの年齢が上がるにつれて横断的関連が増加し、その反面、血中鉛とIQの基準値の間の関係は薄くなっていった。ピーク時の血中鉛濃度だけでは、年齢の高い子供達に見られた低血中鉛レベルとIQの間の関係は説明できない。(Science Selections, p. 324も参照)
空気汚染と未熟児の時系列分析
困惑の要素を減らす時系列分析を使用して、Sagivら(p. 602) は、戸外大気中の直径10 µm以下の微粒子(PM10)と二酸化イオウが未熟児の出産に与える影響を調査した。長期的な未熟児の出産の傾向と同時に存在する別の汚染物質を加味調整し、リスクを持つ妊娠数を相殺した後、著者らは、誕生6週間前に平均的なPM10とSO2の曝露を受けると未熟児出産の危険性が高まることを発見した。また著者らは、誕生5日前のPM10とSO2曝露では急激な影響が ることも発見した。
子供の急性呼吸器障害とカルボキシヘモグロビン
交通渋滞の多い地域では一酸化炭素濃度が高い。COはヘモグロビンと結合してカルボキシヘモグロビン(COHb)となり、酸素の供給を低減させる。Estrellaら(p. 607) は、エクアドルの首都キトの市街地と郊外に住む学齢期の子供たちを対象にして、急性呼吸器感染症(ARI)とCOHb濃度の関連について調査した。COHbが安全レベルを超えて1パーセント増加するごとに、1.15倍の子供たちがARIの治療を受ける可能性が高いことが判明した。この調査結果は、CO曝露と呼吸器感染症の関係を立証する重大な証拠を提示している。
トキシコゲノミクス
DEPによる遺伝子発現への影響
Raoら(p. 612)は、ディーゼル排気微粒子(DEP)をラットの器官に注入し、気管支肺胞洗浄(BAL)によって摘出した細胞と肺組織の中の曝露後遺伝子発現を調査した。BAL液内の細胞は量と時間にかかわらず増え続けたが、これは主に多形核白血球の増加で った。 In vitroでの肺胞マクロファージと培養した肺の繊維芽細胞の研究では、肺の繊維芽細胞がインターロイキン-6と単球の走化性因子で るMCP-1の重要な供給源で ることが示された。
小論文
ブレベトキシン小論文
フロリダの赤潮は、定期的に発生し、強力な神経毒で るブレベトキシンをメキシコ湾沿岸の周辺水域と大気に放出している渦鞭毛藻のKarenia brevisによって引き起こされる。フロリダの赤潮毒性への曝露は、ヒトの健康に悪影響や、魚類や海洋哺乳類の大量死と関連している。この小論文 (p. 618, 621, 626, 632, 638, 644, 650) は、動物モデルと実験室での研究を使用してヒトの曝露に関する研究結果に適用することにより、エーロゾル化したブレベトキシン曝露と身体への影響を特徴付けるプログラムについて記述している。最終目標は、身体への悪影響の阻止方法と、これを削減する治療法の開発で る。(Science Selections, p. 324も参照)